藤井勘圿が描く絵は独創的で多彩である。墨を使うマシラ(猿)、岩絵具で描く自然の静物、心象人物、人形、大津絵風のモノたちと、その表現手法は多岐にわたる。ジャンルの異なるこれらの絵が一人の画家によるものとは思えないくらい多様性に富んでいる。描き始めて30年にもなるというマシラ(猿)は、嵐山モンキーパークいわたやまに何度も何度も足を運び、描き足して初めて一つの作品が完成するという。丹念に重ね上げる素描を原点とする藤井勘圿独特の表現手法は、これまでにない新感覚の日本画を生み出している。
日本の美術界は「画壇」という日本独特の枠組みによって形成されており、多くの画家はこれらの組織に入り作家活動をしている。藤井勘圿はいかなる組織にも属さない。特定の組織・会派に属していては自分の描きたい絵を描くことができないからだという。「絵具と紙と筆があればいい、なんと言われようと、自分の描きたい絵を描く」、これが藤井勘圿の絶対的な想いであり普遍の信念である。地道にギャラリーを訪ね歩いて活動を続ける藤井勘圿は、縛りの多い現代の美術界にあって極めて異色の存在だ。
藤井 勘圿(ふじい かんすけ) Kansuke Fujii
1947年 兵庫県丹波市山南町出身
1963年 増永弥太郎(京都)に師事
1974年 日本画家として独立
1980年 小松均の墨絵教室に入塾
1980年 フランスパリ日仏絵画展に出品
1988年 東京で初個展開催
1991年 マシラ(日本猿)を描き始める
以来、銀座松屋、高島屋などで定期的に個展開催
京都在住、無所属。
マシラ 藤井 勘圿画集(求龍堂)
嵐山モンキーパークいわたやまのニホンザルを描いた30年間の記録。
上整本 定価:6,380円(税込)
258mm/267mm/21mm 180頁(掲載作品150点)
Kansuke Fujii