萬年筆くらぶ・fuente 交流会2010 - fuente meeting 2010

2010年10月24日

 

 

かつてない異常気象の夏、紅葉の美しい秋を飛び越えて、どうやらこのまま冬に突入するような気配である。

 さて、「萬年筆くらぶ・fuente」の交流会が10月23日と24日「北欧の匠」で行われた。今回は、機関誌「fuente」の発行50号記念ということでいつもに増して盛りだくさんであった。

その内容を書いておきましょう。


・    往年の萬年筆コレクター中園宏さんの講演

・    オークション (競売品リスト)

・    ワーグナー、森睦さんと山田さんのペンクリニック

・    ユーロボックスの万年筆修理・販売

・    革職人岡本拓也さん(T.MBH)の革製品

・    Stylo Art 数野元志さんの木工製品
・  fuente 50号発行記念グッズ  (ノートfuenteとともに、フエンテの革製しおり、木製ペン置き)

・  オリジナルノート

・    特別バザー品(土居さんが手塩にかけ作った新米、谷川さん作成の万年筆関連DVD、数野さんの木製ペン置き)

・    高橋さんから差し入れの産地直送りんご


 「fuente」は、今年めでたく50号を迎えた。50号に至るまで実に17年という年月を重ねてきた。その間、会員400名に配布されたfuenteは、なんと2万冊にものぼる。スポンサーを募ることもなく、すべて自前で、せっせとfuenteを送り続けることなど、なかなかできないことだと思う。あらためて、中谷べそさんの器の大きさと人柄には心うたれるものがある。


  翌日の夜、食事の席で、古山浩一画伯が言った言葉が非常に印象的であった。「万年筆の業界は、万年筆をお金儲けにしちゃった。お金ではなく、もっと万年筆文化ということを考えなければ業界はどんどん衰退していってしまう」と。私は、彼の言葉に一瞬ドキリとしたが、的をえた意見だと思いとっさに「僕自身はそういうつもりはないですよ」と、答えるのがやっとだった。万年筆の業界人として何かもっとできることがあるのではないかと後になって考えたりもした。勿論、万年筆がたくさん流通して業界が潤わなければそこに「万年筆文化」は生まれることはないと思うが、停滞気味とはいえ一時期の頃とくらべると、状況ははるかによくなっていると思われる今だからこそ、万年筆業界に携わる人たちに新たな展開を期待したいと思う。


  その一方で、萬年筆くらぶのでべそさんがやっていることは確実に「万年筆文化」に貢献していると思う。自分のスタンスをかたくなに守りながら、ゆっくりとではあっても着実に前進し、積み重ねていく独特な手法ではあるが、これこそがでべそさんのいう「万年筆を語るサロン」であり、萬年筆くらぶ・fuenteなのである。fuenteは50号を迎え、発行者である中谷でべそさんが、会員一人一人にそれぞれの想いを語ってもらうべく寄稿を募り、それが「fenteに寄せて」という感動の一冊となった。
「萬年筆くらぶ」発足にいたるまでの経緯や、でべそさんの万年筆文化への初々しく熱い想いが、万年筆が好きで好きでたまらない人たちの「fuente」への想いといっしょに書かれている。これからも未来永劫に続けていってほしいと願うばかりである。


  交流会2日目の一つの目玉は中園宏さんの講演で、私はこの講演を心待ちにしていた。これまでにも、個人的にいろんな話を伺ってはいたが、それでも、何かこれまで聞いたことのない逸話がでてくるのではないかと思っていたからである。 
中園さんの万年筆蒐集は、シェーファー、ライフタイムから始まったという話から、自分が歩んできた道をたどりながら話し始められた。その原点ともいうべき最初の万年筆は、学生のころ、文通をしていたアメリカ人女性からもらったジェードグリーンの綺麗な万年筆だったそうである。非常に感激して、ゆかたと帯を送ってあげ非常に喜ばれたという。


 映画好きの中園さんは、映画を見ては俳優や女流作家にファンレターを送り、手紙を書くということを非常に楽しんでおられたようだ。24歳くらいの頃の話である。大学の4年間は、英語よりフランス語が好きで、フランス語を一生懸命に勉強されたという。日仏学院へも通うようになり、この頃から古時計や万年筆に興味を持ち始めていくことになる。ソウルトリップという西洋骨董屋や新橋の古典屋という店には頻繁に通っていろんな時計や万年筆を見せてもらったそうだ。
想い出深いものとして、現物を見ないで買うことを決めた万年筆があるという。モンブラン、スネークの万年筆とペンシルのセット、そしてダンヒル並木のデスクセットであった。ある骨董屋から出たものだったが、その骨董屋は取り置きを約束しておきながらダンヒルのセットをすなみさん(すなみまさみちさん)に売ってしまった。そのときは本当に悔しい思いをしたが、文句を言ったら「必ず埋め合わせをするから」といい、後年その約束を果たしてくれたという。それはなんと、モンブランのルージュ・エ・ノワールの万年筆(天冠のスターマークが赤い珍しいもの)だった。


  万年筆蒐集には、やはり良いコネクションを持つことが不可欠である。個人のコレクター、骨董屋さんもしかり、絶えずコンタクトを取り、良い関係を保っておくことが蒐集のコツだという。十全社の社長とはよく物々交換をされたそうである。中園さんの所有されていたモンブランコレクションの多くは十全社の社長との物々交換で手に入れたのだそうだ。社長には言わなかったが、中園さんにとっては、ダブついて持っているオノト(デ・ラ・ルー)やウォーターマンと、自分が所有していないモンブランを交換するのだからかなり割りのよい交換であったようだ。なかなかちゃっかりしている部分も持ち合わせておられたようである。もっともそれくらいでなければ良い物も集まらないのかもしれない。


 中園さんの蒐集は、矢立(筆と墨壺を 組み合わせた携帯用の筆記用具)、硯(すずり)などの文房四宝、印籠、江戸めがね、大名時計、はては掛け軸などにも及び、その蒐集の広さにはびっくりしまう。萬年筆の蒐集に一区切りをつけた後は、特に矢立と和時計(大名時計)の2つに力を入れて蒐集された。それが平成6年頃まで続き、それでも中園さんのモノに対する興味は尽きず、ついに中園さんとしては最後の蒐集物となる相撲グッズにまで及んでしまうことになる。そのきっかけは意外にも万年筆だったそうだ。丸善に相撲関係の人が出入りしていて、その人の紹介で相撲にのめり込んでいくことになる。万年筆をやっていたから相撲につながったわけで、万年筆には感謝しているとおっしゃっていた。いつか聞いたことがあるが、あの大横綱双葉山の手形(手に墨をつけて紙に押したもの)や、江戸中期の番付表を所有されているそうである。徳川八代将軍吉宗の時代のものというから恐れ入る。


  中園さんは、蒔絵万年筆にはひときわこだわりがある。蒐集していたころは質のよい万年筆がたくさん出回っていて、よいものはほとんど独占状態だったそうだ。中園さんはいう。「蒔絵の大御所としては、六角紫水、松田権六、飯田光甫、飯島松郷らがいました。現在もいろんな蒔絵万年筆の作家がいるが、昔の作家にはとてもかなわない」と。現代作家の技巧が昔の作家に追いついていないということだけなのか、あるいは蒔絵の技法がうまく伝承されていないのか、それはなかなか簡単には語れないと思うが、中園さんの言葉は少なくとも私には、蒔絵文化伝承へのひとつの警鐘にも聞こえた。


  感心させられるのは、中園さんの蒐集はすべてその道を極めているところである。単なる蒐集ではないのだ。和時計、矢立、そして、万年筆、どれをとってもその内容たるや一級品がずらりの博物館級なのである。それは、絶えず究極のものを追い求めてきた結果であるが、凡人にできることではない。蒐集されてきたものは、その道の博物館や資料館に引き取られていったものが少なくないというから驚きである。これまでコレクションに費やしたお金は一体どのくらいになるのかと気になるところではあるが、それは詮索しないでおこう。


 今回の萬年筆くらぶの交流会はfuenteの発行50号と重なり記念すべき素晴らしいものとなった。fuenteが、これから更に万年筆文化を担い、大きく貢献していくことは間違いない。みなさんと有意義で楽しい時間を過ごすことができました。お疲れさまでした。また、次回皆様とお会いできることを楽しみにしております。




 

「萬年筆くらぶ・フエンテ」を主宰している中谷でべそさん。
萬年筆くらぶ事務局:  中谷でべそ 〒243-0405 神奈川県 海老名市国分南1-6-30
 fuente.naka@nifty.ne.jp PFB02273@Nifty.ne.jp

 




fuente50号とfuenteに寄せて。

 

 

 

 

 

ノート「fuenteととも」に、サインをする中谷でべそさん。 やはり、ヘミングウェイで。

 

 

 

 


この日のために全国から寄せられたバザー品。


 

 



手前から、ノート「fuenteとともに」、オリジナルノート、杉本さんのDVD、
高橋さん差し入れのりんご、Stylo Art の万年筆、ペン置き。
 


 

 

 

 

fuente50号発行記念グッズ。
木製ペン置き、革製しおり、ノート「fuenteとともに」、ペンシル芯。

 

 

 

 


ワーグナーの主宰者、森さんと山田さんのペンクリニック。

 

 


 


ユーロボックス(藤井)

 


 


革職人、岡本拓也さん。(T.MBH)

 




「五十音」店主の宇井野京子さんとStylo Artの数野元志さん。

 

 



Stylo Artの万年筆と木工製品。

 





萬年筆コレクターで名を馳せた中園宏さんの講演。

 

 




中園さんのコレクションの一つ、江戸めがねと印伝のケース。


 

 

 

 

万年筆画の古山浩一画伯とワーグナー主宰者の森睦さんは、それぞれ、様々な媒体を通じて万年筆の情報を発信している。

 

 

 



 

 

 



 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オークションの様子。万年筆や絵葉書の付録が付いた寄せ書きは一番の高値がついた。

 

 


 

 

皆さん、オークショングッズの品定めに忙しい。

 

 


 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 


 



自称インキ止めおやじの土居さん。(中央)

 

 

 



土居さんのインキ止め万年筆コレクション。

 

 



杉永さんのペンコレクション。古典万年筆がずらり。


 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 


神谷利男さん(左)の著書には、万年筆関連の書物がある。

 

 

 

 

神谷さんの著書「万年筆でペーパーナプキン・スケッチ」と「My Favourite Fountain Pens」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



T.MBH(岡本拓也さん)の革製品を見るでべそさん。

 

 

 




 

 

 



インキ止めおやじこと、土居さんと久保工業所の久保幸平さん。

 


 

 

 


 

 


 



 

 

 

 

 

 


アメリカで仕入れたという鈴木さんのおしゃれなシャツ。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

居酒屋「八蛮」での飲み会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寄せ書き集の巻頭にべそさんが書いた、万年筆好きの人たちへの便り。

 

 

 

 

 



成川さんは「萬年筆くらぶ・フエンテ」のよき理解者で、毎回交流会の会場を提供されている。
家具をはじめ、インテリア、陶磁器、テーブルウェア、小物など、北欧からの直輸入品が常時数万点あるそうです。

北欧の匠 
東京都中央区銀座1-15-13 北欧ビル  電話:03-5524-5657

 


写真は、日高さん、杉本さんから提供いただきました。
写真削除ご希望の方は右記まで連絡ください。 03-3538-8388 info@euro-box.com